道州制に関する第2次中間報告
平成19年6月14日自由民主党道州制調査会
前 文
現在の日本が明治維新、敗戦後の復興・再建に次ぐ第三の改革の時期に直面しているといわれてから久しい。ここ十年余りの間にも、行財政改革、経済構造改革、金融改革、教育改革など様々な構造改革に取り組んできたものの、いまだ、将来に向かって、つまり改革後の国の姿、形のイメージをつくることができないままとなっている。
今こそ、政治は究極の革命的構造改革を実施することによって国民の期待に応えていかなければならない。それは、明治維新の「廃藩置県」に匹敵する「廃県置州」ともいうべき道州制の移行を断行することによって、これまでの中央集権体制を一新し、地方分権体制への大規模な転換を行うことである。
これまでの明治以来の中央集権的システムは、わが国の近代国家建設に大きな役割を果たしたものの、今や制度疲労を起こしつつある。今後は地方にできることは地方に、民間でできるものは民間に移行することにより、国民と国土全体に「希望」と「ヤル気」を奮い立たせ、新しいフロンティア精神を呼び覚ますことが急務である。
激動する国際社会の中で国際戦略、危機管理などに強い中央政府と、自治体の再編による自立的政治・経済圏ともいうべき品格と活力に満ちた一国並みの道州と基礎自治体から構成される、新しい「国のかたち」を創造しなければならない。
道州制調査会は、平成16年11月に設置され、翌17年10月に第1次中間報告を公にしたところである。これに引き続き、15回にわたって総会を開催するとともに、本年1月には5つの小委員会を設置し、30回を超える議論を経て「道州制に関する第2次中間報告」をまとめた。
道州制は、国家の統治機構を再構築する課題であり、今後も既得権益に果敢に挑む覚悟と勇気をもって政治主導での議論を行い、結論を出していくことが時代の要請である。
1 道州制の意義・目的、区割り等
(1)道州制の意義・目的
グローバリゼーション、少子化、成熟化の潮流の中で、行政の効率化を目指すとともに、地方自治の中で個性と活力を持ち、地方の発信力を高めることが強く求められている。このため、一方で市町村合併の推進や権限・財源の移譲等により基礎自治体をさらに強化するとともに、都道府県を越えた広域的なエリアで地域戦略を担う組織を創出し、多極型の国土を形成していくことが急務となっている。
こうした認識の下に、道州制を導入する意義・目的は、第1に「国際社会に発信できる多極多彩の活力ある圏域を地方に創出すること」、第2に「地方分権を推進し基礎自治体の行財政基盤を強化すること」、第3に「効率的な行政システムを構築すること」と考えるべきである。
地球規模のグローバル競争の中で日本が世界と伍して競争するために、国の役割を外交・安全保障等に重点化し、内政は道州に任せる体制をつくる。東京への一極集中を打破し、地域の活力を培養して日本全体の活力を高め、世界に通用する産業・文化・文明を各地域から直接発信する。
明治以来機能してきた官僚主導統治のあり方を見直し、縦割り行政、省益追及、前例踏襲、霞ヶ関への陳情行政等を改め、基礎自治体と道州の体制により地方が自立する体制をつくる。住民に一番身近な主体が権限と責任を持つ、補完性の原則に基づく地方主権・地域主権を実現する。国から道州及び自治体に対して、権限、財源、人間をパッケージで移譲を行う。
行政の財政規律を持たせつつ、財政的な自治ができる圏域を確保する。国・地方を通じた行政の改革による二重行政の解消、現在の都道府県の区域を越えた広域行政の実現により、行政経費を節減し、国民の負担を軽減する。補助金や交付税の「陳情行政」から脱却し、受益と負担のバランス感覚に基づいて、地方が自らの創意工夫を最大限に生かせるようにする。
(2)道州の区割り等
道州の区割りは、各道州の自立を前提として、地理的・歴史的・文化的条件を考慮しつつ、各地域のアイデンティティや地域のシンボル等も勘案して、国民的議論により決定する。具体的な区割りについては、国の地方支分部局の管轄区域や民間の経済活動・企業活動の区域などを十分勘案する必要がある。
また、区割りの決定に当たっては、各地域の意見を十分勘案するものとする。なお、既存の都道府県の区域に必ずしもこだわる必要はないとの考えもある。
道州の規模は、住民が歴史的・文化的にほのかな連帯意識と身近さを感じることができるものとすることが考えられ、極端に大きな規模とならないように留意することも必要である。
いわゆる州都のあり方については、各道州のアイデンティティとの関連や区域内の交通の利便性などを考慮することが必要であるとともに、諸外国において見られるように中都市を州都とするなどの配慮も考えられる。
なお、現在、政治・経済・文化等が集中している東京都の位置づけについては、道州制の下における税財政制度のあり方とも密接に関連することから、道州制全体の制度設計の中で、大きなテーマとして別途多様な観点から集中的な議論が必要である。
2 道州と国の役割分担
(1)役割分担の基本方針
道州制はこれまでの統治機構を根本から変革するものである。
道州は都道府県に代わる広域自治体とし、道州と基礎自治体が自己決定と自己責任のもとで政策展開と行政サービスを実現できるよう、国・道州・基礎自治体の役割分担を明確にすることが重要である。
道州制の下において、国は、本来国が果たすべき外交、国家安全保障・防衛、司法など国家の存立や国土の保全、食料安全保障、資源エネルギー対策など国家基本戦略に係る役割に集中することとすべきであり、それ以外の事項については、政策の企画立案機能も含め原則として地方に移譲することとすべきである。
また、補完性の原理に基づき、基礎自治体を地方自治の第一の担い手として制度設計を行っていくべきであり、基礎自治体については、いわば「住民の生きる場」として、都市計画等のまちづくり、地域コミュニティの振興、医療・保健・介護、社会福祉、教育、消防、一般廃棄物処理などの基本的な公共サービスを提供する役割を広く担うものとすべきである。
道州は、基礎自治体による安全・安心・教育等のネットワークを基盤として、地方が国際競争におけるプレーヤーとして参加できる活力を生み出す、いわば「圏域内の地域力を結集する場」として、広域的なインフラ整備、地域産業政策、雇用政策等の必要な公共サービスを提供する役割を担うこととすべきである。
(2)国・道州・基礎自治体の役割分担
上記を踏まえ、道州・基礎自治体と国の役割分担については、
①国が政策及び制度の基本または基準を定める場合であっても、その実施主体は道州及び基礎自治体とする。
②地方支分部局は廃止し、その機能を道州または基礎自治体に移管する。
③国庫補助事業は、財源を付して道州または基礎自治体に移行する。
という、三原則を柱に定めることとする。
具体的な事務・権限に関する国・道州・基礎自治体の役割分担については、道州と国の役割分担小委員会で試案を提示して総会等においても様々な議論を重ねてきたところである。しかしながら役割分担を集大成するには、前述の三原則によって、更に濃密に議論を進める必要がある。
(3)役割分担を明定するための課題
道州制を実現し、道州と基礎自治体及び国の役割分担を明確にするためには、乗り超えなければならない課題がいくつもある。
大前提となるのは、何よりも行財政システムの改革である。
官主導・中央集権型の政府からの脱却を図り、人口減少やグローバル化・国際共存に対応した21世紀型行政システムを構築しなければならない。さらにその際には、下記の点を十分に考慮することが必要である。
① 国の地方支分部局のみならず、中央省庁のあり方については、国の役割の重点化等を踏まえた更なる抜本的な再編が必要である。
② 公務員制度については、官民交流を視野に入れて、国家公務員のあり方、道州・基礎自治体公務員のあり方などを国民にわかりやすく提示することが必要である。
③ 国の行う事務と道州・基礎自治体の行う事務の調整や国の道州・基礎自治体への関与のあり方について、その基本的な考え方を整理することが必要である。
④ 税財源については、国、道州、基礎自治体の役割分担と密接に関係することから、自主財源の増強を基本にして、検討を深めるべきである。
⑤ 公共投資改革も重要な課題である。最も議論が集中したのは、公共投資にかかる国・地方の役割分担についてであった。
道州制の下では、公共投資においても、地方の主体的な役割がより重要となる。人口減少、財政制約、環境配慮などの状況を克服し的確に対応していくためにも、公共投資に対する考え方を整理し、道州と国の役割分担を明確にしていくことが必要である。
以上のような乗り越えるべき課題解決の方策を明確にすることが出来て、はじめて「道州と国の役割分担」が確定するものと考える。以上の課題の議論を深めることが最重要である。したがって、これまで例示して来た別表は、これを省略する。
3 道州の組織
(1)道州の議決機関
道州の行政に住民の意見を確実に反映させるため、道州には直接公選の議員による議会を置く。道州の役割・権能・規模を踏まえると、道州議会の権能は、現在の地方議会より強化する必要がある。
道州議会の議員の選出方法については、政党政治との関係、国政選挙や道州の区割り等との関係を十分考慮する必要がある。
また、道州議会の議員数について、その適正な規模のあり方を検討し、さらに議論を深める必要がある。
(2)道州の首長、道州議会との関係
道州の首長の選出方法については、現行制度として定着している直接公選による大統領制の意義・問題点や日本の政党政治のあるべき姿、道州の役割・権能・規模、憲法との関わりなどを含め、議院内閣制という選択肢も含めつつ、さらに議論を深めることとする。
また、道州の首長を直接公選で選出する場合には、首長の多選制限を設けることについて検討すべきである。
さらに、道州の首長をチェックする道州議会の重要性とその役割の充実について、首長の選出方法の問題と並行した一体的な検討が必要であり、首長との関係における議会の権限強化を行うことも検討すべきである。
(3)道州の行政組織
道州の行政組織は、簡素を旨とし、その役割・権能に応じた適切、かつ、柔軟なものとする。
4 道州制における基礎自治体
(1)道州と基礎自治体の基本的関係
道州と基礎自治体の基本的関係については、徹底した補完性の原理に基づき、基礎自治体を地方自治の第一の担い手とすべきである。
現在都道府県が行っている仕事の大部分は基礎自治体に移管する。その場合、基礎自治体に移譲すべき事務・権限を明確に定める必要がある。また、事務・権限の移譲とともに財源・職員を都道府県から基礎自治体に移譲する。なお、基礎自治体の自治組織権はできる限り拡大することが考えられる。
(2)道州制下の基礎自治体の規模等
道州制の導入にあわせて、基礎自治体は、住民に身近なところで自己決定のできる適切な単位として、一定の人口規模・財政規模を有するものに移行すべきであり、そのため、市町村合併の推進により基礎自治体の再編を進める必要がある。
基礎自治体の規模については、地理的な条件不利地域への配慮、歴史的・文化的・地理的諸条件を勘案すること等が必要であり、人口規模の要件だけで決めるのではなく、例えば、基礎自治体として最低限処理すべき事務を定めてその水準を順次引き上げていくなどとすべきである。
なお、小規模な基礎自治体については、道州が補完する方法、近隣の基礎自治体に事務を委託する方法、広域連合や一部事務組合による方法などの補完の方式を工夫する必要がある。
(3)現在の都道府県から道州制下の基礎自治体に対する権限移譲の方策
まず、都道府県の事務・権限をできるだけ基礎自治体に移譲することからはじめ、次いで国から道州に順次事務・権限を移譲することが考えられる。
道州制の下において基礎自治体は、都市計画等のまちづくり、地域コミュニティの振興、医療・保健・介護、社会福祉、教育、消防、一般廃棄物処理などの基本的な公共サービスを提供する役割を広く担うものとすべきである。
道州制の導入に当たっては、補完を行う一部の小規模団体を除いて、基礎自治体の事務・権限は基本的に一律のものとすることが考えられる。
(4)道州制下の基礎自治体のコミュニティ
道州・基礎自治体の規模が大きくなる中で、住民自治の観点からは、基礎自治体におけるコミュニティ、住民自治組織等の充実・強化を図ることが重要である。
5 道州制における税財政制度
(1) 道州制の理念―自主的な財政力の必要性
道州制における税財政制度については、基本的には、国、道州がそれぞれどのような役割を果たすかという行政システムを前提としなければならない。このため、一定の大胆な前提をもとに検討を行った。
道州制は、地方分権の推進と地方行政の効率化という2つの理念に基づき実現を図るべきである。換言すれば、補助金や交付税の「陳情行政」から脱却し、住民自身の創意工夫による魅力あるまちづくりと身近で温もりのある行政サービスを、更なる行政改革の推進と新たな税財政制度の導入により達成していくことが課題となる。
かかる理念に基づく道州制は、各道州の自主的な財政力なくしては、実現不可能である。しかし、仮に税源移譲等により道州の税源を制度として導入しても、税収の基盤となる経済力には道州間で格差があるため、直ちに理想を達成することはできないことから、税財政制度については、二段階に分けて考えるべきである。
(2)第一段階
① 自主財源の増強
地域に密着した個人所得課税、資産課税、たばこ課税や、公共事業の見直しを踏まえた道路特定財源を中心に、道州の役割拡大に応じて、適切な税源を国から地方へ移譲することにより、自主財源を増強する。
なお、道州債の起債償還については、全て道州の責任においてこれを行う。
② 国・地方間、道州間の財政調整(二つの調整システム)
(ⅰ)国からの新しい交付金として、シビル・ミニマム交付金(特定目的包括交付金)を創設する。この交付金は、全て国の負担とする。交付金の対象は、社会保障、義務教育、警察・消防とし、道州ごとに客観的な指標に基づき配分する。
(ⅱ)道州間における財政力の差を是正するため、既存の地方法人関係税による道州間における調整システムを創設する。
③ 知的・社会的インフラ整備
各道州の税収基盤となる経済力を高めるためには、工場の誘致、その地域独自の産業(知的クラスターなど)の育成が喫緊の課題である。そのため、必要な知的及び社会的インフラの整備を国の責任において予め促進していくべきである。
④ 東京問題
また、財政力の地域間格差を是正するためには、道州制全体の制度設計にあたって、東京に税収が集中するいわゆる「東京問題」への対応が必要不可欠である。関連して、例えば東京23区を国直轄として、その税収を各道州に配分することも考えられる。
(3)第二段階
各道州において将来にわたって安定的な経済、産業基盤に支えられ、財政的に自立できる目途がついた段階で、第二段階へ移行する。
第二段階では、道州の財政需要全てを自らの税収で賄えるよう、国からの交付金を廃止し、必要な税源の移譲、新税の創設を行うほか、道州における調整システムも廃止する。
(4)その他の意見
道州制における税財政制度に関しての議論の過程では、以下のような意見があったことを付記しておく。
① 地方へ税源移譲した場合、国債の信任に影響する可能性あり。
② 移譲税目について、消費税が適当である。たばこ税は適当ではない。
③ 地方消費税と法人課税は道州と市町村の役割分担に応じ適切に配分すべきである。
④ 地方の新税や大幅な独自課税も考えるべきなど。
⑤ 財政調整については、第2段階を含め道州制においても財政調整が必要である。
⑥ シビル・ミニマム交付金について、特定の行政分野に関する費用を全額国からの交付金で賄う仕組みは地方分権に逆行する。
⑦ 社会保障分野でも地方が一定の責任を持つべきである。
⑧ 地方債に関し、交付税措置のある既往の地方債には国の責任で経過措置が必要である。
⑨ 道州制導入にあたっての基盤づくりに関し、インフラ整備を待っているといつまでも道州制が実現しない。
⑩ 全国一律の整備を行うことによる無駄な州間競争を避けるべきである。
6 今後の展望
道州制のメリット・デメリットを国民にわかりやすく提示し、地方分権改革をはじめとする諸改革と連携しつつ、道州制の導入を推進する必要がある。
道州制特区制度については、北海道からの積極的な提案を期待するとともに、北海道からの提案を真摯に受け止め、道州制の先行モデルが実現するよう全力をあげるべきである。
また、今後3年以内に策定される政府の道州制ビジョンや現在進められている新たな地方分権改革の進展などを踏まえて、その後3~5年を目途に道州制推進に関する基本法の制定や実施計画の策定等を行い、その後2年程度の準備期間ののち完全に道州制に移行することが考えられる。
道州制に関する国民的議論の促進のため、広報等の活動に力を注ぎ、さらなる世論の喚起を図っていく必要がある。
(残された検討課題・さらに検討を深める課題)
○道州の区割りのあり方
○道州の州都のあり方
○道州制下における大都市制度、東京都のあり方
○道州と国の役割分担
○道州制下の基礎自治体の規模等
○道州議会と自治立法のあり方
○道州と国会のあり方
○道州に対する国の関与のあり方
○道州制下における中央省庁の体制のあり方
○道州における公務員制度(官民の人材交流を含む)のあり方
○道州と税財政制度のあり方
当調査会においては、引き続き、5つの小委員会を存置し、今秋より、上記の検討課題を中心に、鋭意、検討を進めていくこととする。
また、これと併行して、国民的な議論を深めるため、関係団体、住民等に広く呼びかけ、 各地方での意見交換会を実施していくものとする。













